温泉騒ぎから数日の後、雪のつもった博麗神社では雪かきにも飽きた霊夢がコタツでお茶を飲んでいた。
何故か神社にまで出てきて遊んでいる氷の妖精や猫2匹の笑い声や、人がお茶を用意したときだけ出てきて
茶請けをつまむ妖怪が居たりするが、まぁそんなものは地底に潜るに比べればささいなことでしかない。
紫 「暇そうね?」
霊夢「年がら年中何か起きてもらっちゃ困るわよ。たまにはゆっくりとしていたい時もあるわけで」
紫の軽口にもあまり本気で返すつもりのない霊夢は、茶請けを手前に引き寄せながら答える。
温泉が湧いたことで、いつもより少し贅沢な冬を越せるだろうと思っていた霊夢は、
ニヤニヤとした笑顔の紫を見て微妙な違和感を感じた。
霊夢 「あんた、またなんか変なこと考えてるんじゃないでしょうね」
紫 「さぁ? 別に今は何も考えてないわよ」
霊夢 「今は……?」
紫 「そう。今は。近いうちにまたやってもらうことになるとは思うけれど、今はまだ、ね」
紫の予告とも言える言葉に「またー?」という顔をする霊夢ではあったが、
少なくとも桜が咲いたり幽霊が出たり地縛霊が出たり真夏になったりしていない今回は
そんなに大きい問題にはならないだろうと思っていた。
数日後、博麗神社の鳥居が無くなるまでは。
霊夢 「……光の屈折とか、そういう話じゃないわよね」
魔理沙「おう。空を飛んできたが、赤いのがすっかり無くなってたもんで思わず通り過ぎそうになった」
博麗神社は曲がりなりにも神社である。
その神社の鳥居が無くなれば大結界にも影響を与えそうなものだが、幸いにも今は特に変わったことは無い。
根元からすっかり無くなってしまった鳥居の穴には雪がつもっていて、昨晩のうちに無くなったのだろうとは
予想がつくが「誰が」「どうやって」というところにはまったくもって心当たりが無いのであった。
霊夢 「いやー、あんな大きいものを持っていく奇特な妖怪なんているのかしら」
魔理沙「そもそもどうやってもっていったんだと。萃香がでっかくなってぶんなげたのか?」
霊夢 「だったらその投げた鳥居はどこにいったのよ。
だいたいそんなことしたら大きい音がするだろうし、あいつは今は天界で遊んでるはずだし、
これ以外の異変が起きてる感じもしないし……」
魔理沙「あー、異変というか、変なことならあったぞ」
頭をかいていた霊夢は、魔理沙の言葉に硬直した。
魔理沙「いやたいしたことじゃないんだが、うちの家に染み付いてた魔力が綺麗に無くなってたんだ。
あまりにも綺麗になくなってたもんだから、一瞬他人の家かと思ったくらいでなー。
まぁそんなわけで微妙に居づらいからこっちにきたんだが、まさか鳥居が無くなってるとは思ってもいなかった」
霊夢 「いやそんな笑いながら言われても、あんたそれでいいわけ……?」
魔理沙「まぁ良いか悪いかでいえばいいことなんじゃないか?染み付いた魔力ってなんか汚れっぽいじゃん?」
???「じゃあその魔力を使ってみんなで遊んじゃいましょう」
能天気な声とともに、突如として魔力の奔流が起こる。
どこかで感じた力の感触に霊夢はうんざりとした表情を浮かべ、魔理沙は驚きの声を上げる。
嵐のような魔力の暴走が収まったとき、元に戻った鳥居の下には奇妙な台とケースだけが残っていた。
そしてそのほぼ同時刻に。
紅魔館、白玉楼、永遠亭、地霊殿、etc.……に奇妙な台とケースが現れたのである。
渋々調査を開始した霊夢が、晩に霖之助から受けた説明は一言だけだった。
「とりあえず、この麻雀卓で遊べばいいんじゃないかな」